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いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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 〔世界シリーズ〕



 〔スカイスクリーンと 俺らの時代〕






 ある日、未来からやってきたという男が現れた。

 そいつは、このままでは未来の地球は滅ぶと警告しに来たのだ。


 そして、俺は選ばれた。
 この世界を、未来を守るべき者として。


 なんとも映画じみてありきたりな、人が考えて結局たどり着いたような展開だ。

 まさか俺が選ばれるなんて、というのは誰でも考える。
 それが前もって分かってたやつっつーのは、きっと人間を超越してしまったやつか、ただのヒーローを夢見るアホウだ。
 そんなやつに任せるやつの気も知れないが。

 ・・ま、その任せるやつってのは世界を壊滅させたがってるんだろうけど。


 だが幸か不幸かそれとも生憎・皮肉というべきか。
 俺は普通だった。
 どこにでもいるような、あぁそうどこにでもいるような。

 おいマジかよでも正直面倒なんですけど他のやつがやれよ俺がなんだろーが破滅するときゃするんだろっつーかどうでもいい。
 ・・とまぁ、考え方の点で俺は周りとなんら変わらないわけで。
 反論もないだろう、よって俺は普通である。以上証明完了。


 話を戻そう。

 自称未来人の男(信じてるわけねーじゃん。話を理解はしてあげてるけど)は俺に未来の状況を教えるために、何もないところからスクリーンを出現させた。
 辺りが暗くなったような気がした。(これはちょっとすごいと思った。でも映画っぽい)


 スクリーンに映された、荒廃した大地。
 崩れた、建物だったらしい瓦礫の山なんてものじゃない、ただでかいコンクリートの積み上げられた山。
 生物の気配はなく、お前らが侵略者だろ、と言いたくなるような奇怪な機械的な恰好をした生き残りの(おそらく)人類が何人か歩き回っていた。


 そして空は、空とは呼べないものに成り果てていた。


 硬くて重苦しい、灰の色から、
 焼け焦げて煤けた、消し炭のような血の色へと映り変わるなんとも不気味な夕暮れ時。
 俺は、この人が考えてる未来にも、太陽はまだ存在するのかと驚いていた。


 突然、俺の目に映された映像が、ある光景を思い出させた。
 それは、ついこの間学校の帰りに見た、すごくキレイだった夕焼け空。
 それが、スクリーンに映された空に被って見えた。

 そのスクリーンがいかに本物の空を忠実に再現しているか、との未来(仮)の技術に感心しているわけではない。

 むしろ、逆だ。

 あの日の夕焼け空は、スクリーンに映された映像だ。

 俺にはそのように思えた。
 この時代の、まだキレイな本物が、スクリーンのようだと。


 頭上に広げられた超巨大なスクリーンに映された夕暮れの空の映像。
 ・・つまり、結局は、全てはただの映画なんじゃないか。

 それを悟った俺は、この未来人(もうどうでもいい)に協力する気も失せてしまった。
 それ以前の話である、こいつの話の続きを聞く気もきれいさっぱりとなくなった。


 俺は、気付いてしまったんだ。
 こいつが気付かないだけなんだ、まぁ当然だろうけど、自分の世界のことしか考えちゃいないから。


 あんた、分かってないよ。
 どんなに進歩した科学技術を持っていようと、たとえどんなに立派な人間だったとしてもね。

 この時代のこんなにキレイな空でさえ、もうすでにスクリーンに映された映画のワンシーンなんだ。
 少なくともあんた、助けを求める時代を間違えたよ。


 現代の世界は、もう生きていなかったんだ。
 俺達が見てる空は、つくりものだったんだ。


 だいたい、つくられてないものなんてこの世にはない。
 つくられてないものなんて、存在し得ない。


 俺らは最初から、つくられた世界にいたんだ。
 全ては小さなスクリーンに映し出された、ベタな映画の中のつくられた物語。
 物語の始めから終りまで支配された、結末の決められたストーリー 誰もがそのメインキャスト 同時にいつでも簡単に消されるエキストラ。


 こんな張りぼての空を守ってみたって、あんたの未来は変わらないよ。

 こんな空なら、いっそない方がいい。
 そう思わない?思わないだろうね、あんたのことだから。


 俺さぁ、何で俺が選ばれたのか、少し分かった気がする。
 この世界のシナリオをクライマックスに向かわせるためのキャストの一人、だろ?

 俺も所詮、映画の中に組み込まれていただけさ。





 ・・・・もしかしたらキャストがアドリブで演っちゃうかもね、ってのはまた別の話だけど。







<ふ、と夕暮れの空を見た時、
 (あぁ、なんか質感が映画のスクリーンっぽい)
 と思いついて、勢いのまま書きました。

 全てに対してひねくれてるような話が書きたくなってた頃なので、これでやっと満足ですー。
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プロフィール
HN:
三条 静流
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女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
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