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いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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〔語り部、律儀真面目な少女を語る〕




 彼女は律儀だと言われていました。
 学校の先生のお話もよく聞く子でしたし、マナーの悪い人々のように人の見ていないところでゴミのポイ捨てをするようなこともありませんでした。
 周りは彼女を成績云々ではなく優等生と認識していました。
 穏やかな彼女の性格は自然と敵を作らないものであったので、完璧とは言わずとも欠点のあらさがしをされることもなく、現実的ないい人でありました。
 目に入る所にごみ箱があるのに、それがある程度いっぱいになっていると無理に捨てようとはせず持ち帰ろうとするなど、時には律儀すぎるようにも思えますが、それもまた親しまれるための欠点としての素養であり、彼女は周囲のほどよい笑顔を得ていたのでした。

 しかし。自分と他人の思うことは必ずしも一致してはいないものです。
 長年彼女と付き合ってきた親友とは呼ばない友人くらいです。彼女が自分を真面目だとは思っていないのだと知っているのは。
 より優等生であることを裏付けるように謙遜をしているわけではないことが彼女の前提であることを頭の隅に置いてください。
 友人であるその少女いわく、彼女はいたって普通なのです。それは周囲が思うほど完璧ではないということにすぎません。
 彼女は自分を真面目だなどとは微塵も思っていないのです。むしろ、怠惰を体現したかのような人間だという、少しズレてしまった自信のような確信を持っていたのです。

 ですがそれを説明したところで誰が信じるというのでしょうか。
 彼女が本心からそう思っていると知っても、やはり天才だから、そうとまでは言わなくとも似たような言葉で片付けられてしまいます。
 だからと言って彼女は無理に信じてもらいたいとは思いませんし、まず説明という行動を起こすことをしません。
 自分にとって不必要なことをする気がさらさらないのです。それが彼女を怠惰としている彼女という存在なのです。

 それでは。いよいよ、彼女の本質を語るとしましょうか。

 既にゴミでいっぱいであったごみ箱でもペットボトルひとつ投げ込む余裕は十分にありました。
 だが彼女はペットボトルを捨てずに持ち帰った。その理由が彼女たる所以であり、彼女を語るに事足りる。
 それは、『ゴミを捨てる』ということへの怠惰でした。
 ほんの少しあるけばすぐそこにあるのに、彼女はゴミを捨てるためにごみ箱のところまで行くのを面倒に思った。ペットボトルには蓋があるので鞄にいれても汚れることはないと判断したため、持ち帰るにいたったのです。
 律儀どころかたった数メートルを往復することすら億劫に感じる。彼女はいつだってその感覚に従って生きてきました。
 それがどううまく転がってこうなったのか、細かいことを気にしないおおらかな人柄ととられるようになったのです。それはただ、のんびり屋でたいていにこにこしていて敵を作るのが面倒だからと人あたりのよい曖昧な受け答えをしてついには考えることすら面倒臭いと思っているだけなのですが、本人のあずかり知らぬところで彼女の人物像は形成されていきました。
 先生の話をよくきくのも、面倒だと思いつつ逆らう方がよっぽど面倒なことになると判断していたからです。他にも、僅かな差であってもより面倒事の少ない選択をしていった結果が、彼女なのです。
 よりよく多く怠けることに関してだけは、彼女は何も惜しむことはないのです。

 さぁ、彼女がどんな人間かお分かり頂けましたねぇ。
 ずっと聞くだけも疲れていることでしょうから、ではここでひとつ、おさらいクイズをしてみましょう。
 彼女とその友人の会話から、彼女の思うことを想像してみてください・・・。


「なんかさー、なんかさー、私学級委員に推薦されたんだけど」

「ついさっきのホームルームでやってましたから知ってます」

「なんか私で決定しそうな雰囲気なんだよなぁ」

「そうだねぇ。立候補者がいない以前に推薦されまくってたし反対意見なんてわざわざ言わないしねぇ」

「そうだよねぇ」

「ヤなの」

「めんどくせい」

「そういう奴だよねぇあんたは」

「雑務とか事あるごとに代表で前出て発表とか朝早いとか帰り遅いとか・・・マジないわ」

「なら断れば?決定の方向だけどまだ変更可能でしょ」

「あの空気で断れると思って?」

「知らん。私そういう立場になったことないし」

「いいねぇ、私もそういうのがよかったな」

「クラスの人気者がよく言う」

「冗談。期待にストレス感じるような神経してないし」

「それでこそあんただわ。
 で、どうすんの、結局」

「え、何が?」

「時々すごい腹立つのは気のせいかしらコレ。
 学級委員。引き受けんの、やめんの」

「ん?・・・あー、あぁうん、それね。いやーもうそれについて考えるのもなーんかイヤでさぁ」

「・・・その考え方でやっていけてるあんたがうらやましいわ」

「だって、楽なことしかしないもん」

「はいはい、分かりましたよ分かってますよ分かってましたよ、もう」

「そっちはよくそんなめんどくさいことしたがるよねぇ、こっちとしてはありがたいけど」

「そりゃああんたがそんなだし、私がこんなだしね。
 当然の結論でしょう」

「ありがとう。大好き」

「それはどうも」


 さて。これで語りは終わるわけですがいかがでしたでしょう。
 彼女のご友人は彼女の怠惰が楽をするために働けたのでしょうか?
 こっそりと個人的意見を述べさせて頂くとご友人の方が気になる気がしないでもないのですがやはり気のせいだったようです。ここだけの秘密でお願いします、ね。
 おや、オチがない。やぁそれはすみませんそれを言われてしまうと立つ瀬どころか平均台での足場がありません。
 そんなものなど、なくともよいのです。たとえ俺が語り泣くとも構わないのです、ここでは。

 無駄話もここまでに。
 調子のはずれた語りをあなたが求めるときがあるならば、俺はいつでもお呼ばれしますよ。
 申し遅れました俺は物語をかたる者と申します。
 『語り部』。とお呼び頂ければこれ幸い。
 どうぞお見知りおきを、観客のおひとり様。

 ちなみに俺は今、
 こういう回りくねった言い方、最悪の気分です。
 どうかどうか、あなたと俺との内密に。
 あの彼女たちがそれすら億劫とみなすのかは知りませんけど、ね。




<語り部を書く上でやはり一度は書いてみたかった、ただの語り部として語るだけの話。
 とか言って結局語るだけじゃないじゃーんなんていうのは無しで。気持ちは分かりますが無しでお願いします。
 だってそうじゃなきゃ語り部じゃないもの。

 ブログの形式上、初めて読む方にあんまり親切ではないよなぁ、と思ってわざとはじめましてな感じにしてみました。
 早くまとめるべきだよなぁ、うーん。

 律儀真面目な怠惰とその友人の彼女たちに名前をつけるか最後まで迷いましたが、これを読んでくださる方々が必要としなければそっとしまっておこうと思います。
 名前無しイコール使い回しの危険性がありますのでご注意を。
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プロフィール
HN:
三条 静流
HP:
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
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