忍者ブログ
いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

<骸誕前日ネタSS
 (千種と犬のみ、夢じゃありません)




「んーんー。ふふーん」

「何なの犬。さっきからふんふんうるさいんだけど」

「うるへー。うるさいのはそっちらウザ眼鏡!」


今まで機嫌よく鼻歌を歌っていた犬が目つきを悪くして千種を睨みつける。


「いーじゃん。別に、文句ねーらろ」

「うるさいよ」

「うっせーのは柿ピーだし」


ぷすっ、と尖らせた口から息を吹き出して、犬はしゃがみ込みそっぽを向いた。

面倒だ、とでも言わんばかりに、千種は溜め息混じりに眼鏡を押し上げる。


「・・・何かいいことでもあった?」

「あ、わっかるー?」


途端に明るい表情が振り向いた。
だよな、やっぱり分かるよな、と犬はホクホクと笑顔を零している。


「・・・クロームのこと?」

「はぁっ!?ちげーし!」

当て推量で言ってみた千種だが、犬はそれを聞いてカッと表情を険しくする。
ここで下手に慌てて弁明するようならアタリなのだが、どうやら本当に違うようだ。


「なんであんな女のこと祝わなきゃなんねーんだびょん」

「・・・あぁ、」


犬のその台詞を聞いて千種はようやく合点がいった。


「そういう・・・」

「柿ピー気付くのおっせーびょん」


つか、酷くね?
自分のことではないのに、犬は拗ねてしまった。


明日は、六月九日。
六道骸の誕生日。

自分たちの1番大切な人が、生まれた日。


「・・・うん。そうだね。ごめん」


素直に千種は謝った。
勿論、忘れていないといえば嘘になる。が、それ以前に意識することを忘れていた。

誕生日が来たら、祝うものなのだということを。
そんな当たり前のことが、千種には思いつかなかったのだ。


「オレさー、いろいろ考えてんの。明日どうしようかなって」


骸さんに会ったらまず最初におめれとーって言って、あと何しよっかな。
犬はうきうきと考えていることを口にしていく。


「なー柿ピー。骸さん、どうしたら喜んでくれるんかな」


そこで少し、千種は言葉に詰まる。
骸が喜ぶもの、欲しがるものなど、具体的に知っているわけではない。
急に尋ねられても、困ってしまう。


「・・・自分で考えなよ」


しばらく考えた末に、千種はさじを投げたのだった。


「うわっ柿ピーひでぇ!骸さんの誕生日どーでもいいのかよ!?」

「そうじゃないけど・・・」


そんな言い方をされてもまた困る。
めんどい、とうっすら思いながら、しぶしぶ千種は再び思案を強いられた。


そしてしばらくして、下を向いていた視線をついと上げる。
ありきたりだが、もうこれしか思いつかなかった。


「・・・ケーキ、とか」

「うっしゃあ柿ピーナイスアイディア!」


自分の誕生日でもないのに、犬は大喜びでそれに賛成した。
とても楽しみだと、目が輝いている。


そうと決まれば、やることはひとつしかない。


「犬。お金あげるから明日、クロームと一緒にケーキ買ってきなよ」

「なんれあの女も一緒なんら?!」


盛大に抗議の色を示す犬に、千種は溜め息ひとつ。


「犬うるさいよ・・・」

「聞いてんだから答えろっつのバカ柿ピ!」

「骸様を、喜ばせたいんじゃないの?」


ぐ、とさっきまで暴れていた犬の動きは固まる。
あー、うー、と呻き声のようなものと共に視線を宙に泳がせ、やがてズボンのポケットに両手を突っ込んで鼻を鳴らす。


「ちぇ。骸さんのためらかんな、ブス女」

「クロームいないのに何言ってるの」

「うるへー!何も言ってねーびょーん!」


分かりやすすぎる反応で、犬の機嫌はいっきに悪くなる。
しかし千種にそれに取り合う気は一切ない。


「パイナップル入りは、買っちゃダメだよ」

「分かってるっつの。つか、お前が言うな!」


確かに、この果物ネタが骸の機嫌を著しく損ねることになった元凶は彼とも言えるが、千種はそういう意味で言ったのではない。
クロームがパイナップルを食べると口がかゆくなるらしく、それに配慮してのことだったのだが。

どうせなら、全員が喜ぶものがいい。
口には出さない千種なりのささやかな気持ちのようなものだった。


「・・・まぁ、いいか」


理由なんてこの際どうでもいい。


「じゃあチョコレートケーキにしときなよ。骸様、チョコ好きだから」

「オーッケー」


明日がよい日であるのなら、彼らはそれでいいのだ。


「あーぁ」


犬はごろりとその場に寝転がり、天を仰ぐ。


「早く明日になんねーかなー」

「・・・うん」


千種も珍しく、彼と同じことを考えていた。



『はやくはやく、あしたになぁれ』


幼き日の分も、祝ってあげたい。
そして自分たちも、できたら同じようにしてほしい。

大切な人から。
大切な人と。
大切な人に。


ただただ、二人は明日が待ち遠しくてならない。






<フライングで骸さん誕生日前日ネタを。

 昨日買った今週のじゃんぴぅさまに衝撃を受けすぎて悶えまくって死にかけてたので日記で叫ぶ気力すらなくなってしまいまして。
 本日は朝からずっとむくろむくろとしか考えてません。
 マジです。たぎるぅうう!
 そんなわけで文章に還元してみました。

 早く明日になればいいのにと思っているのは私ですが何か^^
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[539]  [538]  [537]  [536]  [535]  [534]  [533]  [532]  [531]  [530]  [529
プロフィール
HN:
三条 静流
HP:
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新CM
[04/25 三条]
[04/24 弥生]
[04/05 三条]
[04/04 雹月]
[10/13 神無月暁夜]
[08/31 ウェイブ]
[08/30 ウェイブ]
[06/29 ウェイブ]
[05/16 ウェイブ]
[04/28 小春]
リンク
カウンター
忍者ブログ [PR]