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いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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<LOM(聖剣伝説)パラレルのアーウィン+骸 逆ハー夢。
 ムクロぶっ壊れててアーウィンとバチバチしてます。捏造しかしてません。












「エル」
「あら、アーウィン」


 いきなり、目の前に現れた悪魔。
 しかしエルは動じもしない。それどころか、笑いかけた。


「またあの話?」

「そうだ。・・エル、俺のところへ来い」
「いけないわ」


 エルは即答した。

「いけない理由があるの」


 それを聞いたアーウィンは、―――アーウィンの中の悪魔が、欲しいものが手に入らないことに憤怒した。


「何故だ!」

 悪魔が、不可解に戸惑い、それをどうすることもできずにただ威嚇するように大きく体を膨らませて叫ぶ。

「お前は俺のところへ来たいんだろう?お前は俺にそう言った!
 お前がそう言ったんだ、俺と生きたいと!
 あれは嘘だったのか?!」
「嘘じゃないわ」

 悲しそうな目をして、エルは静かに言った。


「私は、貴方を愛している。私は、貴方と生きていけたら幸せだと思う。
 ・・でも、ダメなの」


「何故だ?それなら何故俺のところへ来ない?
 何がお前を阻んでいる?!」

「それは・・」


 エルが、口を開いた時。


「何をしているんだ!」

 切羽詰まったような声が鋭く響いて、エルの前に踊り出た。


「ムクロ」
「悪魔を相手にするなんて!正気の沙汰ではありませんよ!」

 そう言って、ムクロは手にした矛を構える。


「君は悪魔の囁きに耳を貸してむざむざと魂を喰われるつもりですか?
 そんなこと、させるわけにはいきません」

「ムクロ、違うの。アーウィンはそんな悪魔じゃない」

 エルが止めさせようとムクロの肩を掴むが、らしくなく頭に血が昇っているムクロは聞く耳を持たない。


「・・お前か」

 アーウィンが、低く低く呟いた。

「お前がいるからエルは俺のところに来れないんだな。
 ・・邪魔だ、消えろ」


「やめてっ!」

 ムクロの矛が悪魔の心の臓に狙いを定め、アーウィンの巨大な手と鋭い爪が人間の頭を捕えようとする。
 少女の叫びはむなしく掻き消え―――両腕を広げた少女が、ムクロの前に立ち塞がっていた。


「やめて、ムクロ。アーウィンを傷つけないで」

 危ういところで避けられた矛先が薄く切り裂いた頬から一筋の血を流し、エルは確かな声で言い放った。


 悪魔も、少年も。身動きひとつできない様子で、特に少年の動揺は激しかった。


「エル・・・君は、 君は、僕を、   僕より、悪魔を、

 君も、君も僕をおいていくのか」


 エルは、ゆっくりと微笑んだ。
 そして、生気を失ったようなムクロに近付いて、


「それは違うわ」

 ぎゅっと、優しく抱きしめた。


「何を言っているの?
 大丈夫、私はムクロをおいていったりなんてしないから」


「っ・・・」

 エルの肩に顔を埋めるようにして、まるで小さな子供がするかのようにムクロはエルを抱きしめ返した。


「こういうわけなの」

 落ち着かせるようにムクロの背中をポンポンと軽く叩きながら、エルは苦笑気味にアーウィンへと振り向いた。


「彼には、私がいてあげなくちゃいけない。だから、アーウィンのところにはいけない。
 ・・放っておけないのよ、以前の貴方と同じだから」


 そうは言っても、アーウィンの目はぎらぎらとしていて、納得がいかないようだった。
 これは仕方のないことだ。悪魔の理論は、邪魔するものはすべて排除し、なんとしてでも欲しいものは手に入れる。

 彼の存在としての本能が、エルを失うことを許さない。


「エル。それは、お前が俺を捨てるということだ。俺を裏切るということだ。
 そういうのなら、俺はどうなる?
 お前がいなければ、俺は独りだ!」


 聞くだけで心に細かな傷が付きそうなほど、痛々しい叫びだった。


「・・貴方は独りじゃないわ。傍にいないからといって私の心が貴方から離れるわけじゃない」


 ムクロから身を離し、エルは微笑んだ。


「詭弁かと思うかもしれない。でも、私はいつだって、いつまでだって貴方の味方よ。
 それに、貴方には素敵な仲間がいるじゃない」


「・・仲間、だと?」

「そうよ。周りをよく見て。
 貴方を大切に思ってる人は、私だけじゃないのよ」


「何だと・・」

 そこで、アーウィンの視線が宙の一点で留まった。


「マチルダ」


 エルは、ほころんだ花のような笑みを見せた。

「今、貴方を誰よりも必要としてるのは彼女よ。
 ・・行ってあげて。貴方を、愛しているんだから」


 アーウィンの目からは既に悪魔の色は見えなくなっていた。


「エル・・俺は、」
「アーウィン」

 エルは、大きなアーウィンの体に抱き着いた。


「アーウィン、幸せになって・・」


 アーウィンはまだ迷っているような風情を見せたが、こちらを睨みつけながらも、今にも殺したい衝動に黙って堪えているムクロを目にして、スッ、と目を伏せた。


 一度だけ、アーウィンはエルを抱きしめて、

 悪魔とは思えないほど優しく優しい抱き方で。


「さよならだ、エル」


 身を離したと思った時にはもう、アーウィンの姿はなくなっていた。


「またいつか会いましょう、アーウィン」


 笑顔で空を見上げて涙を流すエルを背中から抱きしめながら、ムクロはやりきれない表情でエルの視線を追い、心で呟いたのだった。



『・・・死んで次に生き返ったとしても、お前にエルは渡さない』


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プロフィール
HN:
三条 静流
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女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
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