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いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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<リハビリ用骸夢。




〔『好きだから』の理由〕







「げ」

「おや」


 どうして、決して狭くはないこの町で出会うのが、こいつなんだろう。

 そして当の本人は、白々しい、私には白々しいとしか見えない表情で至極自然に嘘を吐く。


「奇遇ですねぇ」

「ああ、うん。奇遇ならもっと確率の低いものであってほしいんだけどね」


 本当に奇遇であるならば。
 どうして昨日も一昨日にも、既視感を覚えるのだろうか。
 そしてそれは今日を遡る日々ほぼすべてにあてはまる。
 これは同じ学校に通っているから、だけではないはずだ。


「どうしました?」


 奴は口許に手を添え、少し首を傾げるようにして、訝しんでいる私を訝しむ。
 その理由も知らない振りをして。


「・・・いや、別に」


 かといって特に返す言葉もない。ので、そう言った。
 すると「そうですか」と奴が言った。


「君、僕に会う度に、不機嫌になるじゃないですか。
 気のせいならそれでいいんですが、僕、君に何かしたのかと思いまして」


 何を言うのかと思えば。
 ・・・何を言うのかと思えば!

 私はきっと、いつも眠そうに怠そうにしていた目を見開いていたに違いない。
 それに対する奴の反応があったからだ。


「あぁ。やっぱり何かしてたんですかね」


 しかしあまりにそれは淡白な反応だったが。

 私が言葉を発しようとするも、唇が変にひきつりそうでうまく言えない。


「・・・やっぱりって、ねぇ、」


 自覚があるのか、ないのか。
 それすらも分からない。
 言ってしまえば、こいつについては何もかもが不明だ。
 転校してきてから、今まで、ずっと。


 先生、私はこの難題を解明しなければならない使命でも負っているのでしょうか。
 赤点でもいいから放棄できないものなのでしょうか。


 ・・・先生。この不明をそのままにしておけない私が悪いのですか?


「なら、聞くけど」


 はい、と返事が返ってくる。
 私は息をひとつ吸って、吐き出した。


「私が不機嫌になる理由。なんだと思う?」


 そう問うと、


「さぁ?それが分からないから聞いているんじゃないですか」


 逆に聞き返された。


「じゃあ、ね、」


 これではうまく伝わらないらしい。
 直ちに質問を変えることにする。


「どうして、私とよく会うのか、考えてみたことある?」

「・・・どうして、君とよく会うのか、ですか?」


 今度はなにやら真剣に考え始めた。


「そう、ですねぇ・・・。確かに、ただのクラスメイトが出会うには回数が多すぎます。
 常に外出しているわけでもないのに、この遭遇率は高すぎる。
 深く考えたことはありませんが、言われてみれば奇妙な話ですね」


 だめだ。
 この台詞に私は諦めを知った。

 きわめて低い可能性だが、ここまで無意識だったのなら、まさかストーカー紛いのようなこともあるまい。
 ただのクラスメイトなのだからそれはさすがに有り得ないことではあるけれど、私にはもうそれくらいしか思いつかなかったのだ。


 ・・・本当に、偶然からできた奇妙な話。でいいのだろうか。


「なんて、いうかね」


 私の発声に、彼は顔を上げた。


「理由もなしにしょっちゅう会うのが、気になるの」


 言った。私はついに言った。
 だが問題は、相手が正しい理解をしているか、どうか。


「僕と会うのが、嫌なんですか?」


 奴は予想をはずさないでくれるばかりか、更に上を行ってくれた。


「そうは言ってない」

「ならどういう意味なんです?」

「だからさぁ」


 そろそろ私にも限界がきていたようだ。


「私はお前が嫌だなんて言ってないし、会いたくないわけでもないよ。
 だけどさぁ、あまりにも不自然じゃない。特に理由もないのに」


 奴はその言葉を咀嚼するように軽く頷いて、ふ、と口を開いた。


「理由がないと会ってはいけないのですか」

「・・・それは、」


 普通なら理由なんてない。
 あるとするならば、強いて言うならば。


「それ、『好きだから理由なんてない』って意味の台詞だよね」


 小説やドラマの見すぎだろうか。
 気付けばそんなことを口にしていた。

 これでは、ただの自惚れ自意識過剰な女じゃないか。
 うわー嫌だ、なんて自分でも思ったので、冗談だとこの失言を流そうとした矢先、


 ・・・先生。
 これだけには解法がないって、どうやら本当のことみたいです。


 感情も読み取れない、無表情に近い面差しで、彼は私を興味深そうにまじまじと見詰めた後、


「・・・あぁ、そうかもしれませんね」


 至極真面目な風情で(それも本当はどうだか知れないが)、・・・彼は、私に天からの声のようなことを言ってのけたのだ。


「僕は、君が好きなのかもしれない」


「・・・は、」


 また、なんという曖昧な言い方をするのだろうか。
 この核爆弾のような発言は、私に多大なるダメージを与えた。
 その程度は僅かな発声はできても身動きが取れないほどと言っておこう。

 そしてそんな私に、奴は---六道骸は、初めて笑みを見せた。

 「クフフ、」と。


「というわけで、これからよろしくお願いしますね」


 私の思考が五感に追いついたのは、六道骸は、こんな笑い方をする奴だったのだということだけ。

 奴はくすくすと笑いながら、対応のできない私にゆっくり、静かに後退も許しはしないように、詰め寄った。


「まずは、そうですねぇ。
 僕の名前、呼んでくれますか」


「ねぇ、  ?」



 声も出せなくなった私に、奴は呼びかけるのだ。



 ・・・あぁ、帰りたかったのに。







<リハビリ中です。意味不明なのはそういう理由と思って目をつむってもらえると助かります。(こら)

 骸さんは、ぶっちゃけわけ分かんない人だと思うんですよ。
 理解不能というか、意思の疎通なんて考えるだけ無駄、みたいな、「何だこいつ」な奴だと思うのですよ。(これでも愛してます)
 で、いつの間にか、骸さんの本質みたいなものを見ちゃったりすると、終わり。(何が)

 真っ黒に楽しそうに笑う骸さんが、一番綺麗だと思う。
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プロフィール
HN:
三条 静流
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性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
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