いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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〔世界シリーズ〕
「はきもの無ければそれも無駄」
「はきもの無ければそれも無駄」
すたら、すたら
すたったったら すったった
はずれた調子の歌をあえて陽気に歌うかのような足取りで、男が夜道を歩いている。
その通りはなんとも古風な空気を纏っていて、まるで時代劇の世界にいるかのようだ。
ひゅらり歩く男の後ろ姿はその世界観には対応する気が少しばかりあるようだが、仁平に羽織り、そして底の高い下駄はやはりどことなく奇妙に映る。
髪は手入れが行き届いているとはいえない。が、伸ばし放題でもない。
邪魔だから適当な長さで切っておいた、そんな感じだ。
男は滑稽にも思える歩みをふいに止め、空の闇夜を見上げる。
「あれ、あれ、まぁ」
通りに人気はなく、立ち並ぶ家々には明かりもなく、男の声や姿を気にする者もいない。
男は見上げたまま、開いた唇をぱかぱかと動かす。
「ひとり。消えたねぇ」
おお寒い。男は身を縮め震わせて、袖に両腕を突っ込んでその中で組んだ。
「やれやれ。今日の誰かも無駄に終わってしまったんだねぇ」
また歩き出しながら、男は呟く。
がざら、こん
がしゃる、こす
下駄の音が地の砂を擦る。
その音は響くのに、男の声は響かずに鮮明に聞こえ、跡を残さない。
「仕方ないよねぇ。無駄にならない日の方が少ないんだから」
さも残念そうに明るく軽く、男は言い眉を下げる。
「今日消えてしまった誰かも、本当は無駄じゃないって言いたいんだけどね」
かなしいかな、誰かの一生を形成したもののみを集めまとめてみれば、彼らをハイジョせざるを得ない。
「かなしかや、かなしかや」
言葉に合わせるかのように、跳ねるようなステップに変わっていく。
首を横に振り振り、男は足元で砂を鳴らす。
「こう言ってる今日の自分も無駄かもしれないんだけどね、」
テンポよく踏み出した男の片足が闇に溶けた。
続いて、もう一歩。
「無駄なものはないなんて考えてるつもりはないさぁ」
僅かばかり、楽しげに。
風にその形を奪われる砂像のように、彼はその体を暗闇に痛みすら与えられずもぎ取られていく。
「ただね、自分が無駄なものに時折惹かれてしまうんだよ」
嗚呼。男は既に胸より上しかない己を見下ろして、困ったような笑みを作り肩をくっと上げる。
「どうやら今日の自分はなくても支障がでないものだったらしいね」
面白いのか、悲しんでいるのか。
くつくつくくりと鳴る喉は、必要なものを奏でているわけではない。
「明日の自分は残るのかねぇ・・・」
空を見ても、闇の合間に月は顔を見せてはくれない。
「毎日が無駄な誰かだったら。
最後に取り残されるのは誰」
そこで、男は完全に闇と混ざり合ってしまった。
そこには此処にも何もない。
通りすらも、最初から見えるはずもない。
あったとしても、この闇の中。視覚はそれを認められない。
あの男は何をしたかったのか、それを知ってもだからといってなす術はないだろう。
この世界が現時点である意味正常に機能している限りは。
かたら、かたら、かたら
この世界に聞こえないものが直接脳に聞こえる気がするのは、どうしたものか。
誰かの語らう声かもしれぬ
がそれも知られることもなし。
消えた誰かの足音が、淋しがりとこの世界に残るのだ。
<新しきも古きにあり、ということで久しぶりに世界シリーズを復活させてみた。
ちなみにそんな格言はありません。似たようなものはあれど、うろ覚えなのでそれなら自分で考えた方が楽しい。
よって間違って覚えちゃいけません。私の言葉はほとんどが無駄事ですから。
本当に気まぐれ。でもそれもまたよし。
気まぐれながら日記のオリジナル小話も大分たまってきたので、この際時間のあるときにサイトの方にまとめてあげてしまおうか。
希望あれば案外近い内にやるかもしれません。
まぁ期待薄なんでそれも気が向いたらいつか。
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プロフィール
HN:
三条 静流
HP:
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。
三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。
三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
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