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いつも何かに心惹かれて語りだす、起伏の激しい無節操ライフ。
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<獄寺×主←山本夢?
 ケンカップルで甘め。



 〔誰にもやりたくないと、思うのは〕







 昼休み。
 私と隼人は空いている教室でふたり、お弁当を食べているところで。

 どこからどう見ても、恋人同士。

 ・・・だよね・・・?





「だから、なんでもいいっつってんだろ」

「よくないんだってば。なんでもいいじゃ、こっちが困るの」


 ふたりきり。甘くて、楽しくて、幸せな空間、なんて。
 とんでもない。私たちの間に、そんなものは存在しなかった。

 今だって、交わされるのは愛の囁き・・がしたいわけではないけれど、言い合いがしたいわけでもない。

 そして今の議題は、「明日のお弁当は何がいい?」という私の発言から始まった。

 くだらないことばかりの、私たち。


「何でだよ。別に、すげー手のこんだ料理作ってこいって無理言ってんじゃねーんだからよ」

 隼人が私の作った弁当を食べながら、ではなくちゃんと口の中のものを飲み込んでから言う。
 彼は一見不良っぽいが、育ちはいいのだろう。こういうちょっとしたところで品がある。っていうのかな。
 たまに、うっかりときめいちゃうこともある。
 うーん、隼人はずるいね。


「それは当たり前でしょ?そんな時間かかるの毎朝作ってられないっての」

 隼人が作ってほしいっていうなら作るけどね、っていうのは恥ずかしいから言わない。
 私はため息をついた。

「でも毎日考えるのも結構大変なんだって。好きなものにしてあげるって言ってるだけじゃん。
 ・・まさか、『お前の作るものなら何でもうまい』ーとか?」

「はっ、んなの言うかよバカ」


 あっさりと返されてしまった。
 そりゃあ、冗談のつもりで言ったけどね。
 あまりにあっさりすぎて、ちょっとへこんだり、とか。


「・・ばかじゃ、ないし。
 何、もう。隼人は何作ったって代わり映えしないって言いたいわけ?」

 ふて腐れたように言うと、隼人は「はぁっ!?」と頓狂な声をあげた。

「誰もんなこと言ってねーだろが!」

「へーんだ、いいもん、もう作ってやんないから。お姉さんにでも作ってもらえばいいじゃない。
 そうだ、山本に作ってあげたら喜んでくれるかも」

「ばっ・・!」


 むすっとして、以前山本にそんなことを言われたのを思い出して漏らすと、隼人の声色が慌てた。
 思わず、びっくり、してしまった。


「俺はなぁ、お前の味がいいんだよ」

 隼人は仕方なさそうに続ける。

「だから何作ったって文句ねぇんだよ。
 とにかく山本に作るのはやめろ、いいな」


 ・・・結局、言っちゃってるんじゃないの。

 素直じゃないなぁ、もう。
 でもそこが隼人らしい。

 だいすきだ。


「しょうがないなぁ、じゃあ毎日頭を悩ませるとしますか」

 笑って言うと、「おぅ」とのぶっきらぼうな返事が返ってきた。

 あぁもうだめだ、面白すぎる。
 私はつい、笑ってしまった。


「笑ってんじゃねーよ、」とぼそり隼人が呟いたところに、背後から近付いてきた影。


「今のって、聞き方によっては結構やばい発言だよなー」

 どこからともなく現れた山本が、ひょいと隼人のお弁当をつまんだ。

「あ、うまい」


「っ・・てっめーこの・・・!」
 途端に態度を変える隼人。
 隼人は何故か山本に対しては特につっかかるような言い方になる。
 結局、この二人は仲がいいのか悪いのか、同性でない私には男の子の友情というものはよく分からない。


「やっほー山本。いきなりだね」

「ちっす。わり、つい獄寺の弁当つまんじまった」

「いーよいーよ、減るもんじゃないし」

「どう考えてもおもいっきり減るだろーが!」

 ナチュラルに会話を始めた私と山本の間に隼人が割って入ってきた。


「てめーどういうつもりだ」

「まーまー、怖い顔すんなよ、彼女の前だろ?」

 隼人が声を低めると、山本は笑って返していた。
 言っておくと、何を話しているのかはちょっと聞き取り辛くて、私はほとんど内容を理解していない。


「おかず食っちまったのは悪かったって。
 でもさ、いけないと思っててもどうしても欲しいものってのは、やっぱあるわけ」

「なっ・・てめぇ!」


 隼人の声が急に跳ね上がって、山本の高い胸倉につかみ掛かった。


「・・・ちょっとやめなよ、小学生じゃないんだから」

 私は呆れて言った。


「・・え、」「はっ?」

 二人の動きが止まり、不意をつかれたような声となんともいえない反応を返す。

 ・・だって、そうでしょう?


「おかずひとつでケンカしないでよ・・隼人がそんなに玉子やきがすきだとは知らなかったけど」

 ため息を交えつつ、つくづく男の子って子供っぽいとこあるよなぁと思った。
 どうでもいいことで張り合ったりね。
 やっぱりそこは、理解不能。


「ちげーし・・」

「悪い!オレもお前の味、食べてみたくてさー」

 隼人が言うのを遮るように、山本は笑顔を向けた。
 でも何故か、視線は隼人に向けられていた、気がする。


「お前の言う通り、これじゃガキだな。
 でもさ、オレだって、すげーすきなんだぜ」

 照れたように頭を掻きつつ、山本は私を見て、隼人をちらりと見たようで、そうしてまた全身を私の方に向けた。

「なぁ、一回、オレにも食べさせてくんねーかな」


 山本がそういった次の瞬間には、隼人が私の前に立ち塞がっていた。


「てめーにやるもんはねーよ。さっさと戻りやがれ。
 つーかその面見せんじゃねー」

「そう言われても、オレはこいつに聞いてるのな」

「こいつって呼ぶんじゃねぇこの・・!」


 また、険悪な雰囲気になる。
 この二人はどうしてこう・・・うまく付き合えないんだろう。


「はいはいストップ。私をのけ者に話さないで下さい」

 これでは休み時間が終わってしまう。
 やむを得ず、制止をかけた。


「山本ごめん。嫌じゃないんだけど、作ってあげられないんだ」

 言うと同時にぐいと隼人の袖を掴み引っ張って。
 立てた人差し指を、隼人の頬に柔らかく突き立てた。

「隼人が嫌がるんだよね。ごめんね、わがままな奴で」


「なっ・・何言って、やがんだよ!」

 隼人は真っ赤になって、無理矢理私を引きはがした。


「えー、だってホントのことじゃない?さっき隼人が言ったばかり・・」

「うっせぇお前ちょっと黙れこのバカ!」

「バカじゃないし!何怒ってんの!」

「怒ってねーよ!お前が恥ずかしいこと言うから・・」

「そんなこと言ったら隼人だって十分恥ずかしいよ!素直じゃないつもりでもバレバレなんだから!もうちょっと隠せ!」

「んなっ、仕方ねぇだろお前相手なんだからよ!お前のせいだっつの!」

「は!?責任転嫁しないでよっバカ隼人!」

「バカじゃねぇ!」


「あーうんうん、もう分かったから痴話喧嘩はよくねーのなー」

 にこにこと。
 それはもうにこにこと、山本が発声した。

 彼の存在をすっかり忘れていた。
 私たちは、は、と言い合いをやめる。


「夫婦は似るっていうけどな、あんま見せ付けられっとこっちがやけそうなのな」

 私と隼人は互いに目を逸らしている。

 ちょ、やめてよ山本、それもうイジメだから。
 顔を覆いたくなるけど、それをしたらまた突っ込まれそうで我慢する。


「ま、いいけどさ。仲がいいのは羨ましいぜ」

 肩をすくめ、山本は笑って言った。

「無理言ったのオレだし。悪かったのな、邪魔してさ」

「う、ううん、そんなことないよ」

 あくまでも山本は笑顔で、その度に私は居心地が悪くなって。

 あぁ、何でいつもこうなっちゃうのかなぁ。
 隼人と、私は。


「じゃ、オレ戻るわ」

「おー、さっさと行け。もうくんな」

「ハハッ、・・あ、そうだ獄寺」

 隼人の口調を前向きにとってか、山本は明るく笑い、そしてふと思い出したかのように声をかけた。
 ちょっとこっち来い、と手で指示する。


「あぁ?何だ・・」

「ひとつ、言い忘れてたことがあってな」

 そうして山本は隼人に顔を寄せるようにして、何事かを呟いた。


「っな・・・っ!」

 見る間に隼人の仏頂面が崩れていく様は、私を驚かせた。


「ねぇっ、何話してんの?」

「ハハ、何でもねーよ!じゃなっ」


 最後までこんな調子のままで、山本は駆け足に去って言った。

 なんだか、悪い意味ではないのだけれど、まるで大きな台風が過ぎ去ったあとのような倦怠感に襲われた。


「結局、何しにきたのかなぁ、山本・・。あっ、隼人に用があったのか。
 隼人、さっき山本と何話してたの?」

 やっぱり気になる。
 隼人の表情が依然真剣なものだったので、おそるおそるだけど、尋ねてみる。

 隼人は私を見て、数秒の後、目を逸らした。

 それが同時に私の頭に手が乗せられて言われたのでなかったら、きっとまたケンカになっていただろう。


「お前は余計なこと気にすんじゃねーよ。
 俺がいる以上、悪いようにはさせねぇ」


 ・・正直に言ってしまうと、まったく意味が分からなかった。
 何言ってんだろう、変なものお弁当に入ってたりとかしないよね!?とさえ思った。


 でも、まぁ。

 自惚れかもだけど、大切にされてるのは分かるわけで。


「・・・隼人ー」

「あんだよ」

「明日何食べたい?」

「・・・・・・・・・・・・玉子やき」

「わかったー」

「・・・もたもたしてっと休み時間終わんぞ」

 私が笑いかけると、隼人は耳が赤いのを隠すように私の頭を軽く叩いて、早口で急かす。


「わかってるってば」


 私も、隼人も、もしかしたらこのままでもいいんじゃないのかな、と思えた。





(ゴチソウサマ)

 山本が陰でひそり呟いた真意を知る者は、おそらく彼以外にはいないだろう。


(オレだって、負ける気はねーんだけどなー)

 苦笑しつつ、彼は廊下をゆったりと歩いて教室に向かう。


(・・・ひでーのな)



 教室に戻ると、いつの間にか先に戻っていた二人が言い合いをするいつもの光景が見られた。

 そして山本は、

「おっ、お前ら早いのな!」


 笑顔でその中に加わるのだった。









<山本、黒っ!
 ご飯食べてたらもそっと思いついて書いてみたんですが、予想以上にもっさんが黒い!
 甘いのはどちらかといえば苦手です・・。

 サイト更新がちょっとうまくいかないので、とりあえず日記で。
 時間あれば名前変換追加してメインにあげようかと思います。
 なんか・・無駄にキャラばかりが増えていくなぁ・・。
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プロフィール
HN:
三条 静流
HP:
性別:
女性
職業:
学生
自己紹介:
三条の生態日記。
時々気まぐれにイラストとかSS小説とか出ます。
現在主に書いてるオリジナル小説は『かたり部語り』シリーズです。


三条静流の代名詞:
骸狂。カフェイン中毒。絵描きで物書き。むくろふぃりあ。半腐り。骸狂。
モットーは気ままに気まぐれにマイペースに。
曖昧なものと強烈なものに伴う感動をこよなく愛する。
受験終了しました。新生活もなんとかやっていきたい。
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